わたしは南米ブラジルの語学学校や大学院に通った経験があります。
入学の際に必要書類として、日本の大学の卒業証明書と成績証明書の提示を求められました。
しかしその際原本とポルトガル語の翻訳を提示するだけではなく、日本の公的機関による書類の認証とブラジルで資格を持った翻訳人による翻訳が必要など書類の認証手続きでかなり苦労しました。
ブラジルやそれ以外の南米の国へ留学を考えている方はこういう手続きが必要になることを頭に入れておくことをおすすめします。
渡航直前になって準備をする場合かなりの時間を要するため、十分な時間を確保して手続きに当たってください。
以下に具体的な手続き方法をお伝えします。
日本の教育機関の書類をブラジルで提出する場合
日本の大学の卒業証明書などをブラジルの大学に提出する際には以下の手続きを行う必要があります。
- ステップ1:日本の大学で卒業証明書を発行する
- ステップ2:外務省にて公印確認を受ける
- ステップ3:在日本ブラジル領事館で領事認証を受ける
- ステップ4:ブラジルにて公証翻訳人に翻訳を依頼する
- ステップ5:ブラジルの公証役場にて公証翻訳人の署名認証を受ける
- ステップ6:ブラジルの教育機関に提出
次に各ステップの詳細をお伝えします。
ステップ1:日本の大学で卒業証明書を発行
発行したい証明書を教育機関にて取得します。
わたしが卒業した大学は証明書を日本語で発行するか英語で発行するか選ぶことができましたが、ブラジルの場合、英文書類も外国語扱いでメリットがないので、日本語で発行してもらいました。
ステップ2:外務省にて公印確認を受ける
ここから本格的な手続きが始まります。
まずは外務省で公印確認の手続きを行います。
日本の公的機関や私立の大学など国から認可を受けている機関が発行した文書が公式に発行されたものであることを証明する手続きです。
これにより公印確認を受けた文書が対外的に信頼できるものであることを示すことができます。
(参考:外務省「証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明」)
具体的な手続き方法は以下のとおりです。
- 以下の必要書類を揃える
・証明が必要な文書(発行日より3か月以内の原本)
・申請書
・レターパックライトなど返送用封筒(返送先要記入) - 郵送または外務省の窓口にて必要書類を提出する
- 郵送で公印確認済み書類を受け取る
・所要日数:原則受領した3開庁日後に発送(窓口での即日受け取り不可)
(詳しくは外務省「申請手続きガイド 3 申請方法・必要書類」を参照)
わたしは東京霞が関にある外務省の窓口にて直接申請しました。
実際に手続きしたのが2012年頃のため、手続きに手数料がかかったのか覚えていません。
外務省のHPを見ても特に記載がないので確かな情報ではないですが、無料の可能性が高いです。
ステップ3:在日本ブラジル領事館で領事認証を受ける
外務省で認証を受けた書類を在日本ブラジル領事館で認証を受けます。
- 領事館の予約システムにて申請手続きの予約
・予約システム:ブラジル外務省「e-consular」 - 領事館にて手数料を支払う
・手数料:900円~
(2024年5月1日以降の金額。詳しくはブラジル外務省「領事手数料」) - (必要に応じて)郵送でも手続きが可能
詳細はブラジル外務省「学校関連書類の認証」確認してください。
わたしは東京五反田にある領事館で手続きをしました。
窓口申請で当日認証をしてもらった記憶があります。
ステップ4:ブラジルにて公証翻訳人に翻訳を依頼する
ここからはブラジル渡航後の手続きになります。
ブラジルで公文書や私立の教育機関の文書を翻訳する場合、公証翻訳人に依頼する必要があります。
「公証翻訳人」という言葉は日本では聞き慣れないと思います。
公証翻訳人(tradutor juramentado)とは、公的な認定試験に合格し、居住地の商業登記所に登録された翻訳人のことです。ブラジルの法律では、ブラジル国外で発行されたポルトガル語以外の文書がブラジルで効力を発するためには、国が認定した公証翻訳人によってポルトガル語に翻訳されなければならないと定められています。
卒業証明書がブラジル国内の公証翻訳人により翻訳されないといけないのは上記のとおりですが、ではどのように公証翻訳人に翻訳を依頼すればよいのでしょうか。
以下の流れで依頼することができます。
- 公証翻訳人リストから翻訳人を探す
ブラジル外務省のHPに州ごとの翻訳人リストが掲載されています。
(ブラジル外務省 “Tradutores juramentados no Brasil”)
ご自身が滞在される地域で活動している公証翻訳人に依頼するのが便利です。 - 公証翻訳人に連絡し、翻訳の依頼をする
- 翻訳料を払い、翻訳文書を受け取る
料金は翻訳人または担当する翻訳事務所に確認してください。
上記サイトでの検索や公証翻訳人に直接連絡を取るのはブラジル生活が長くないと至難の業だと思いますので、ブラジル現地のお知り合いに頼むことをおすすめします。
わたしは当時サンパウロ州の田舎町でボランティアで日本語を教えていました。
そこでお世話になっていたブラジル人の方に公証翻訳人探しと翻訳事務所までの送り迎えをしてもらい、手続きを終えることができました。
ステップ5:ブラジルの公証役場にて公証翻訳人の署名認証を受ける
翻訳された文書には公証翻訳人の署名がされています。
この署名が公証翻訳人本人のものであることを証明する手続きが必要です。
この手続きを公証役場(Cartório、カルトーリオ)で行います。
ブラジルの公証役場は日本でいう市役所と法務局の手続きを行うところで、各地区に設置されています。上記の署名認証に加え、出生、結婚、死亡の登録や、不動産登記の登録も行います。
署名認証に関して言えば、日本における印鑑証明に似ており、自分の署名をご自身が住む地区の公証役場で登録します。
自分もしくは第三者が文書上の署名を認証する場合、該当する署名の登録のある公証役場に行って手続きをします。
翻訳された文書に担当した公証翻訳人の署名が記載されています。
公証翻訳人の署名が登録されている公証役場に翻訳された文書を持っていき認証を受けます。
ステップ6:ブラジルの教育機関に提出
公証役場にて公証翻訳人の署名の認証が終われば認証関連の手続きは終わりです。
あとは留学先のブラジルの教育機関に提出するだけです。
ブラジルの教育機関の文書を日本に持ち込む場合
ブラジルの大学や大学院を卒業し、日本に卒業証明書を持っていく場合にも手続きが必要です。
ただし手続きは簡単です。
- 教育機関で必要な証明書を発行
- 教育機関の署名(公印)が登録されている公証役場で署名認証
- 必要に応じて証明書を日本語に翻訳
自分でできるのであれば自分で翻訳して構いません。
まとめ
ブラジルに留学する際に必要になる卒業証明書などの書類の手続きの流れをお伝えしました。
お気付きのとおりかなり手間がかかります。
これはブラジルに限ったことではありません。
コロンビア出身の妻によるとコロンビアも同じで、南米の他の国でも同じだろうと言っていました。
南米全体で学歴に関する書類提示の規則は厳しいようです。
これらの認証手続きを行わないと正式な書類として認められず、留学そのものに支障をきたしてしまいます。
一方、日本ではその点はかなり寛容だと思います。
とは言え日本のケースを基準にし南米留学をしようとするとかなり大変な思いをすると思います。
これらの手続きが必要になることをあらかじめ頭に入れておくことで心の負担は軽減されると思います。
南米に留学を検討されている方はぜひ参考にしてください。
補足情報
今回はブラジルの大学や大学院、大学付属の語学学校の入学する場合の教育関連文書の認証手続きについて説明しました。
しかし、日本で修士号を取得しブラジルで博士課程を行う場合やブラジルの政府機関に就職する際にはこれらの認証手続きに加え、外国で取得した学位の再認証(revalidação de Diplomas)が必要になります。
これは外国で取得した学位をブラジルの大学等でブラジルの学位と同等であるかどうかを確認するプロセスです。これにより、学位の価値やレベルがブラジルの基準に合致しているかどうか確認します。
これは卒業証明書の認証手続きより比べ物ならないほど複雑なので今回は割愛させていただきます。
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